バイク用品店などで見かけることは少ないが、インターネットを中心に1,2年で急激に存在感を増しているメーカーが存在する。横浜を拠点にしているカエディア(Kaedear)だ。
筆者はプライム会員なので、インターネット通販の利用はアマゾンがメインになっているが、初めてカエディアの製品を目にしたのもアマゾンだった。
アマゾンは中国企業が直接出店しており、激安製品が多数販売されているが、正直な話をすればカエディアの製品もその一つだと思っていた。
だが蓋を開けてみれば、横浜でディーラー系の整備士をしていた青年が、「車では当たり前にあるのにバイクにはないもの」を作りたくてたった一人で創業した会社だったのだ。
今回カエディアから規格外のスマートフォンホルダー用防振対策製品が発売されたので、詳細と謎に包まれるカエディアという会社に迫った。
車では当たり前のワイヤレス充電がバイクにはなかった
代表取締役の飯沢氏はディーラーで整備士をしている際に、車用の置くだけでホールドしワイヤレス充電が開始されるスマートフォンホルダーはあるのに、バイク用品メーカーからは当時発売されていなかったことに気が付く。
機械の技術に関しては整備士の経験、モノづくりのアイデアや発想力に関しては自身の車のカスタムを通して学んだというが、製造工場に関しては一から開拓したという。
ディーラーでは「それ以上はやらなくていい」と言われてしまうことが、自分の商品開発に関してはコダワリ抜いて作れることにのめり込んでいく。
ただ開発には経費がかかるので、それまでの人生の全てだったというカスタムした車、バイク、パーツを全て手放して充てたという。
紆余曲折あり、製品完成後は整備士とインターネット通販の二足の草鞋を履いて活動することになるが、発送などを自分でやる時間がないことからアマゾンの発送代行サービスを利用。
沢山のお客様から反響を頂き、製品を褒めて頂ける事が喜びに繋がり独立することになるが、筆者の二輪業界での長い経験の中でも信じられないぐらいの加速度で会社は成長を続けている。
褒められるのが嬉しいから、お客様の声を製品に反映する
ユーザーファーストというと聞こえがいいが、商売で製品を販売する以上は本当の意味で顧客に寄り添うのは難しい。
だが飯沢氏の考え方はシンプルでブレがない。曰く「人に褒められるのが嬉しいから、お客様が欲しいというものを作って販売する」というものだ。
その最たる例はツイッター上でのユーザーとのやり取りによって企画が始まり、意見や感想をもらいながら制作を進めてきたというサンバイザーと今回発売されるスマートフォンホルダー用の防振対策製品だろう。
特にサンバイザーに関しては、ツイッター上にユーザーとのやり取りが残っており、実際にユーザーの発言から製品開発が始まり、意見や感想を取り入れながら進めてきた経緯が見て取れる。
ユーザーとの距離が近いカエディアだからこそ開発できた防振対策製品
一般的に防振対策製品というと、iPhoneなどのカメラに内蔵された光学式手ぶれ補正システムを壊さないために、目に見えにくい高周波を低周波に変換するための製品というイメージが強い。
飯沢氏の話ではお客さまとやり取りしていると、バイク乗車中に画面がブレて見えにくくなるのを解消する製品だと思ったという声が定期的に届くのだという。
iPhoneの手振れ補正にダメージを与えると言われている細かい振動の高周波を、大きな振動の低周波に変えるわけだから目に見える振動は大きくなる。
結果、画面は防振対策製品を取り付ける前よりも見にくくなってしまう可能性があるわけだ。
ある調査会社の統計ではオートバイのメインユーザーである30~60代に関してはアンドロイドOSの利用者が65%程度になるのだという。
アンドロイドOSのスマートフォン製造会社は、アップルのようにバイクの高周波でスマホが壊れるという発表はしていない。
つまりアンドロイドユーザーからすれば、目に見える振動を低減し、画面が見やすくなる防振対策製品の方が需要があるというわけだ。
まさかの三種類のダンパー付属「バイブアブソーバー」KDR-M0
カエディアではすでに防振対策製品としてバイブアブソーバーKDR-M0を販売しているが、今回はなんとお値段据え置きで硬さの異なる防振ダンパーを二つ追加。
合計3つの防振ダンパーでお客様のあらゆるニーズに答えるという。
3つの硬さの異なる防振タンパーを付属することで、手振れ補正の故障を防ぎたいユーザーは細かい振動を大きな振動に切り替えるダンパーを、画面の見やすさを優先したいユーザーは大きな振動を細かい振動に切り替えるダンパーを利用すればいいわけだ。
スマートフォンの重さに合わせて選ぶ
さらに詳しく飯沢氏に話を聞くと、スマートフォンの重さに合わせて硬さを選ぶと良いという。
スマートフォンが重いとダンパーの動きが良くなり振動を吸収するが、段差などの衝撃で振れやすくなり、逆に軽ければダンパーの動きが悪くなり振動の吸収性が悪くなる。だが反面段差などの衝撃で触れにくくなるのだとか。
ダンパーはバイクでいうサスペンションにあたり、重量によってセッティングの最適が異なるのは同様なのだ。
ダンパーの硬さを変えるのは、サスペンションのプリロードやバネレートを変えることと同じ考え方といえる。
ダンパーの付け替えは簡単
最適な硬さは実際にスマートフォンをマウントして確認してみなければならない。付け替えが手間だと面倒になってしまうが簡単にできるので安心してほしい。
ステップ1:リングを緩める
以上である。
あとは逆の手順で硬さの異なるダンパーを装着するだけだ。
硬さの違うダンパーを試してみた
カエディアではソフト、ミディアム、ハードという名称で硬さを分けている。実際にそれぞれをカエディアのスマートフォンホルダーに装着してテストしてみた。
テスト車両はスーパーカブ110、実際にスマートフォンホルダーに筆者愛用のiPhone12PROをマウントしてテストを実施。更に水の入ったペットボトルをスマートフォンホルダーにおいて振動を確かめてみた。
前者の実験では極端な違いは感じられなかったが、ソフトは触れが大きく、ハードは小さかったので画面の見やすさはハードの方が見やすいといえるだろう。
ペットボトルを乗せた試験では水が大きく揺れてしまうことがなく、防振タンパーがしっかりと機能していることがわかる。いずれの場合も水は大きく揺れていないがソフトが一番少ないように見える。
100%はないからこそ、ユーザーの判断にゆだねる
通販サイトやツイッターなどの書き込みを見てみると、防振ダンパーを付けたけど壊れたという書き込みを見かけることが少なくない。
細かい揺れの高周波で壊れると言われているが、大きな振動がスマートフォンに与える影響もゼロではないはずだ。そのため揺れの度合いをユーザー自身に任せるというのは新しい選択肢だと感じた。
ただいずれの場合にも、防振ダンパーは役割を果たしており、水を乗せた実験では硬さ問わず水が躍ることはなかった。
最近では色々な防振ダンパーが登場してきているが、カエディアのバイブアブソーバーは1,500円(税込み)という驚異的なコスパなので試してみると良いだろう。
文/写真/動画:相京雅行