4月に入って、第1週末にロードレースとトライアル、第2週末にモトクロスの全日本選手権2022年が開幕。いよいよ本格的なレースシーズンを迎えたのだけど、なにせ日本ではレース人気低迷中。レースなんて話題にしても、「興味ないし……」とか言われちゃうのが普通なのだ。
でも、そんな人にこそぜひ知ってもらいたいのが、4月17日(日)に千葉県・茂原ツインサーキットで開幕する全日本スーパーモト選手権。会場の雰囲気はとてもユルくて、入場料は格安。それでいてめちゃくちゃ走りが激しくて、ツーリングついでにちょっと立ち寄るのにちょうどヨシ。そしてコースでは、バイクがドリフトして宙を飛ぶ!
そもそも……、スーパーモトって何よ?
源流はアメリカにあり。1970年代末、アメリカではロードレースとフラットトラックレースとモトクロスが、バイク三大レースとして人気だった。そこであるTV番組の企画で、「その中で誰が一番速いのかを決めよう!」と、舗装路とダートをつないだコースをつくって「スーパーバイカーズ」というレースを開催したのだ。
この企画そのものはすぐに終焉を迎えたのだが、これに参加していた欧州出身のレーサーたちがその文化を持ち帰って自国開催。とくにフランスで流行り、「スーパーバイカーズ」をフランス語に訳した「スーパーモタード」という競技が、1980年代前半から開催されてきたのだ。
ちょっと前まで新車が販売されていたホンダ・CRF250Mやヤマハ・WR250Xやスズキ・DR-Z400SMやカワサキ・Dトラッカーシリーズなど、「モタード」と呼ばれる市販車カテゴリーは、この「スーパーモタード」で使われているレーサーをモチーフとしたもの。「モタード」は「バイカーズ」のことで、つまり「バイク乗り」だから、正確に意味を考えるとなんのこっちゃという感じだけど、スーパーモタードが日本的に略された結果なのだ。 そしてこの「スーパーモタード」という競技は、フランスでの人気低下などを経て、現在では「スーパーモト」と呼ばれることが増えてきた。
サーキットベースの特設コースで全日本選手権も開催中!
スーパーモト(あるいはスーパーモタード)のレースは、基本的に8割ほどの舗装路(ターマック)と2割ほどの未舗装路(ダート)を組み合わせたコースで、スプリント方式で競われる。バイクは、モトクロッサーをベースに前後ホイールを17インチ化してオンロード系のタイヤを履かせ、モトクロッサーよりも前後サスをややハード方向にセッティングするなどの仕様変更が施されたものが使われる。ハスクバーナなどの一部海外メーカーでは、最初からそのような仕様になったレーサーを市販している場合もある。
で、そんなスーパーモトは、じつは日本でも全日本選手権としてシリーズ戦を開催中。2022年の場合、北は宮城県のスポーツランドSUGOから南は熊本県のHSR九州まで、全国各地で全6戦が実施される予定だ。
日本の場合、やや短めのサーキットまたはカートコースが舞台となることがほとんどなのだが、とはいえ基本的にはどのコースにも、ダートやジャンプが設けられている。距離で考えると、ダートの区間は2割前後。コースによって、ダートが複数区間に分かれている場合もある。ちなみに2021年には、アスファルト路面でジャンプするセクションが盛り込まれたコースなどもあった! 例えばツーリング中、路面が工事などで突如として未舗装に切り替わったら、それだけでカラダはガチガチに緊張しておっかなびっくり……なのだが、全日本選手権のライダーたちは、もちろん速度は落とすものの、まるで同じ路面かのようにアスファルトからダートに突っ込んでいく。同じライダーとして、「この人たち、なんなの……」となること間違いなし!
バイクでドリフトする姿がとにかくカッコいい!
スーパーモトにはダートの区間もあるため、“滑る”のは当たり前。軽量だけどホイールベースが長い車両が使われていることもあり、ライダーたちはコーナーの進入でブレーキングと同時に少しでも車体の向きを変えようと、いわゆる「進入ドリフト」のような、リヤタイヤをスライドさせる技を使うことが多い。 MotoGPや全日本ロードレース選手権でも、同様の技が使われることは多いけど、マシン操作に対する自由度が高いスーパーモトは、スライドの角度がハンパない。ロングストレートエンドで横を向いて走るバイクを眺めているだけでも楽しめちゃうのだ!
ロードレースの有名選手たちも腕を磨く!
スライドが当たり前のスーパーモトは、オンロードでのマシンコントロールを磨くのに最適なレースカテゴリーのひとつとされていて、ロードレースの有名選手たちもトレーニングに取り入れている。かつて、あのレジェンドライダーのバレンティーノ・ロッシ選手がイベントレースに参加したこともあるのだ。
日本でも、昨年の全日本ロードレース選手権最高峰クラスとなるJSB1000でランキング2位を獲得した濱原颯道選手は、かつて全日本スーパーモタード選手権で大活躍したライダーだし、現在はスーパーバイク世界選手権に参戦しているヤマハの野左根航汰選手も、スポット参戦で腕を磨いていた時期がある。そして現在、全日本スーパーモト選手権の最高峰クラスとなるS1PROクラスで3連覇を達成している日浦大治朗選手は、ロードレースからしばらく遠ざかっていた状況から昨年の全日本ロードレース選手権JSB1000にスポット参戦して、鈴鹿サーキットでの第5戦で2レースとも3位表彰台に立ち、スーパーモトがロードレースに役立つことを濱原選手や野左根選手に次いで証明したのだ。
料金はお安く環境は快適。“ちょっと見”にいいぞ!
全日本スーパーモト選手権は、アグレッシブなライディングシーンがいっぱいで、バトルもガチガチに激しいので、とくに応援するライダーがいない状態で眺めているだけでも、“ショー”としてかなり楽しい。コンマ1秒を争うロードレースのスゴさはわからなくても、進入スライドや立ち上がりでのドリフトやウィリー、ダート区間でのジャンプなんかは、見れば誰でも「すげ~!」となるはずだ。
それでいて、競技としてはかなりマイナーでほとんどプロ化されていないので、レースの観戦料金もかなり安めに設定されている。例えば千葉県・茂原ツインサーキットで開催される2022年開幕戦の場合、入場料は1000円で駐車料金はバイクなら300円(クルマは500円)。料金は会場によって異なるけど、なんにせよこんなレベルなので、気軽に観戦できる。
しかもレースは、日曜日のみのワンデー開催。朝から練習走行、予選、決勝(基本的には1大会で2レース)がどんどん進行するので、凝縮してライダーたちの走りを楽しめちゃう。モトクロスとは違って会場はサーキットがベースなので、ダート区間があるとはいえ土ボコリは少なめ。観戦で歩く場所も舗装路面がほとんどだし、トイレもたいてい水洗だ。 だから全日本スーパーモト選手権、ツーリングの途中に3時間だけ……なんて観戦にも最適。年間6戦と少ないけど、近くで開催されているときにちょっと立ち寄ってみたい!
◆2022全日本スーパーモト選手権シリーズ スケジュール
第1戦 4/17(日) 千葉県・茂原ツインサーキット
第2戦 5/15(日) 熊本県・HSR九州
第3戦 6/12(日) 福島県・エビスサーキット
第4戦 8/21(日) 愛知県・美浜サーキット
第5戦 9/18(日) 奈良県・名阪スポーツランド
第6戦 10/16(日) 宮城県・スポーツランドSUGO