頭は一つしかないのにヘルメットの数が増えていく。バイクの新車情報も気になるけど、乗車中に必ず身につけなければいけないものだから、やっぱり新作ヘルメットは気になるものなのだ。
2021年の夏、バルセロナのヘルメットメーカーLS2と衝撃的な出会いをした。比較的手を出しやすい1万9800円という価格のスポーツジェットヘルメットCOPTERは、ベンチレーション機能に優れた「お値段以上」のヘルメットだった。
LS2の動向が気になり、公式ツイッターをフォローしていたところ、2022年2月1日に3つのヘルメットをリリースする投稿を発見した。レーシングフルフェイス、アドベンチャーヘルメット、そして今回紹介するツーリングヘルメットのCHALLENGER C GTだ。
実は以前からLS2のラインナップにはCHALLENGERの名を冠したモデルが存在する。CHALLENGER Fというモデルだ。こちらのモデルは3万2780円というお求めやすい価格でユーザー評価は上々のようだ。
CHALLENGER C GTに関しては「F」の上級版という位置づけにされており、お値段は少々アップしているが、帽体に軽量で硬度に優れたカーボンを採用している。価格は5万4780円とカーボン仕様としては破格を実現している。
実際にディテールをチェックしつつバイクで走行して魅力を探った。
付属品が豪華!
CHANLLENGER C GTのディテールをご紹介する前に、付属品に触れないわけにはいかない。実用的で豪華な付属品が用意されている。
ヘルメットバッグ
ヘルメット持ち歩き用のバッグが付属されている。ヘルメットを購入すると柔らかい布の入れ物がついていくるが、バッグが付属されるのは稀。クッション材が配されており傷がつかないように配慮され、持ち手は長さの調整が可能なので長くすれば背負うこともできる。
※バッグとは別に袋も付属されている
ピンロックシート
日本でも高級なヘルメットには標準装備となっているピンロックシートが付属されている。シールドが曇るのを緩和させるためのもので、筆者愛用のヘルメットにもついているが、雨の日や冬場などシールドが曇りやすいシチュエーションでの使い勝手は最高だ。
ヘルメットメンテナンスリング
ヘルメットメンテナンスリングは逆さにしてヘルメットに傷がつかないように置くことができるので、内装の脱着、クリーニング、インカムなどアクセサリーの装着にも便利なアイテムだ。
GLASSES SYSTEM
GLASSES SYSTEMはチークパッド上部をゴムバンドにより圧縮することでメガネをかけやすくするためのシステムだ。初めて見るアイテムだがメガネユーザーには救いのアイテムと言える。
箱も専用品
一般的なヘルメットメーカーの外箱は共通の印象があるが、CHALLENGER C GTは専用の箱が用意されている。外箱には製品のグラフィックがプリントされていて特徴なども一覧表示されているので、売り場に箱がおいてあればヘルメットの魅力がわかりやすいはずだ。
見ため
カーボン
最大の特徴はやっぱりカーボン。外側から塗装用クリア・塗装・カーボンシートの順番に重ねられている。カーボン柄は平織りと綾織りがあり好みが分かれるが、光の反射で立体的に見えるので美しいと言われる綾織りが採用されている。
また恐らく帽体が割り型なのだろう、ヘルメットの頂点部分でカーボンシートの継ぎ目があるが、他の部分には見受けられない。
カーボンシートを継ぎ目なく張るのは難しい。熟練の張り子が担当している印象だ。
各所に配されたエンブレム・ロゴ
ディテール部分の作りこみも申し分ない。随所に質感の高いLS2エンブレムが配されており、商品名やカーボンを採用していることをしめすロゴなどが小さく入っている。大きく入っていると野暮ったく見えるが、ちょうどよいサイズと感じた。
レーシーなエアロとダクト形状
レーシングヘルメットに比べるとエアロは控えめだが、左右に配置されたダクトと繋がっており迫力のある見た目を実現。更に後頭部左右に配されたダクトは車のマフラーのような造形になっており、横、後ろどちらから見てもインパクトのある印象を残している。
内装
かぶり口の部分を見ると合皮素材が採用されているが、カーボン柄のようになっており高級感があり、レーシーな印象を強めている。
内装脱着の際に気がついたが、顎ひもに「F」はスチール製のラチェットバックルが採用されているのに対して、CHALLNEGER C GTは軽量なアルミ製のDリングを採用している。
ラチェットバックルは便利は反面、構造上重くなってしまう。せっかく帽体にカーボンを採用したのだから、少しでも軽くという設計者の思いが感じられた。
チンカーテンはしっかりとヘルメットに装着されているが脱着は可能。一般的にはもう少し薄く簡単に取れるものが多いが、厚みがあるので下からの巻き上げの風をしっかりと遮り静粛性に貢献しそうだ。
吸湿性に優れた低刺激な素材を採用しているため、ベンチレーションがガッツリ効けば常に快適な環境を維持することができそう。この点は後ほど試乗しながらチェックしてみたい。
なお汗をかいても内装は全て取り外しが可能で、洗濯できるので清潔な状態を維持することができる。
機能性
インナーバイザー付き
日差しが強い時にはヘルメットを被った状態で左側のノブを操作することでインナーバイザーを出すことができる。
ベンチレーションは四か所
ベンチレーションは額、顎に一か所ずつ、頭頂部には二か所配されている。インナーバイザー付きだと額の部分のベンチレーションは機能しないように思うが、実際はどうなのだろうか?実走して確かめたいと思う。
シールドロック
シールドは不意に開閉しないようにロック式になっている。センターにボタンがあり、こちらを押すことでロックが外れる仕様だ。
重さ
重さを測定してみると1538gだった。インナーバイザー付きヘルメットはどうしても重くなりがち。更にCHALLENGER C GTは指定のインカムを見栄え良く収納できる設計を採用している。
インカムを意識した設計にするとパーツ点数が増えて重量増につながるが、ライバルのインナーバイザー付きヘルメットと比べても50g~200g程度は軽量にすることを実現している。
※指定インカムは設計が古く、操作性もイマイチという判断から日本では販売されていない。
バイクで走ってみた
サイズ感
CHALLENGER C GTを被って走行してみたが、海外ヘルメットだと、まずはサイズ感が気になると思う。筆者はSHOEI・ARAI・OGK KABUTOいずれを被ってもMサイズだ。
SHOEIのヘルメットをメインに使っており、フィッティングサービスで頭頂部・額・後頭部・サイドともに内装を盛っている。ギリギリSサイズではない微妙なサイズらしい。
CHALLENGER C GTは顎ひもを広げながらかぶるとスムーズ。最近のヘルメットはフィット感と静粛性を重視する傾向があるのでかぶり口が狭い製品が多いが同様だ。
全体的には特に日本のヘルメットメーカーとサイズ感に違いはないように思う。強いて言えばチークパッドが少し緩く、ヘルメットの幅が少し狭いかな?と感じたぐらいだ。
同時に発売されたレーシングフルフェイスヘルメットThunder C GPと比べてもサイズ感が異なるように感じた。購入する際は試着してみてからの方が良いだろう。
体感的な重さ
数値的には軽くともかぶってみたら、以外と重く感じることもある。ヘルメットの製品開発には携わったことがないので、詳しいことは言えないが、軽量なだけではだめなのだ。
試着してみた段階ではチークパッドが多少ゆるく感じたので、体感的には少し重く感じるかな?と思ったが杞憂だった。とてもインナーバイザー付きのヘルメットとは思えないぐらい軽く感じる。
ベンチレーション
インナーバイザーを使っていないときは額部分に収納されているので、ベンチレーションを開けても効果がないのではないかと思っていた。だが実際にベンチレーションを開けてみると額の部分にしっかり風が入ってくる。
ピンロックシートが付属されているが今回はつけずに走行したので、信号待ちではシールドが曇ってしまったが、口元のベンチレーションを開けると外気が導入されると共に曇りを解消するのに役立った。
ベンチレーションを開ければしっかりと風が通り抜けるので、吸湿性の強い内装と相まって快適に走行することができる。
空力
試しに高速道路も走行してみたが、レーンチェンジの際など首を振っても抵抗を感じることがなかった。ツーリングなどでの常識的なスピード域では不満を感じることはないだろう。
気になる点
一点だけ気になる点があった。口元のスペースが広く感じたのだ。厚めのブレスガードがついてはいるが、隙間ができてしまうので巻き上げの風が入ってくるのだ。
視界が広く、口元が広いことでフルフェイスヘルメット特有の閉塞感を感じないので、人によってはプラスに感じるとは思うが、巻き込みの風によって発生する音と、口元が多少涼しく感じるのが気になった。
最大の魅力は多機能なのに軽い事
インナーバイザー付きの多機能ヘルメットは帽体が大きく、重くなる。CHALLENGER C GTに関しては帽体が大きいが軽量なので「多機能ヘルメットがいいけど重いのはちょっと・・・」という欲張りな方にお勧めのヘルメットだ。
最近では取り扱いを開始した量販店も徐々に増えているので、見かけた際は是非とも軽さを体感して頂きたい。