バイク乗りの会話を聞いていて、「いったい何の話をしているの?」と疑問に思うことはないだろうか?よくよく聞いてみると、愛車に名前をつけて呼んでいると理解できるのだが、どうしてメーカーがつけた正式名称で呼ばないのだろうか?これについて考察してみたい。
バイク乗りが愛車を独自の愛称で呼ぶ理由
パートナーだから
バイク乗りにとって、愛車はただの機械ではなく、感情的に深い意味を持つ存在だ。バイク乗りは愛車を操作し、共に旅をし、思い出を共有していく。このような体験の中で、バイクがあたかも相棒や友人、さらには家族のように感じるようになるのだ。バイク乗りは愛車のことを「相方(あいかた)」や「あいつ」などと三人称で呼ぶことが多い。これが高じると、三人称ではなく名前をつけて呼ぶようになるのだ。そして、「今日も調子いいね!」などと愛車と会話が出来るようにもなるのだ。
アルファベットと数字の羅列だから
バイクの名称は、英語と数字だけで構成されているパターンが非常に多い。クルマもアルファベットを使うが、バイクと比べると少し控えめだ。アルファベットと数字だけで愛車を呼ぶのは何だか味気ない。そのため、バイク乗りは愛車に独自の名称をつけて呼ぶのだ。そのほうが、愛車との距離感が近づいたような気がして、バイクライフがもっと楽しくなる気がするのだ。
バイク乗りの間での公式名称だから
バイクの中には、メーカーが決めた名称のほかに、バイク乗りたちが付けた名称が定着し、一般的にその名称で呼ばれるようになったものも存在する。この名称が分からない場合、バイク乗りとの会話についていけなくので、バイク乗りたるもの、出来る限り知っておきたい常識である。
公式化されたバイク特有の愛称
有名な略称の紹介
バイクの世界では、さまざまな車種に独特の略称がある。略称は車種の特徴や性能、当時の流行を反映して付けられた呼び方だ。車種を特定するだけでなく、そのバイクへの愛着や思い入れを表す大切な言葉といえる。以下にいくつか例を挙げておくので、是非覚えておいて欲しい。
ユメタマ:カワサキ ZX-9R(ロゴがそのように読めたから)
フェックス:カワサキ Z400FX(FXをフェックスと呼んだ)
ザッパー:カワサキ Z650(風を切り裂く「ZAP」という意味から)
マッパ:カワサキ 500SS MACHⅢ(マッハが「真っ裸」マッパになった)
ゼッツー:カワサキ 750RS(型式名から)
ゼッペケ:ホンダ Dio ZX(アルファベットの略称)
バブ:ホンダ CB250T(排気音がバブ―と聞こえるから)
ゴキ:スズキ GSX400E(タンクがゴキブリっぽいから)
ザリ:スズキ GSX250E(ザリガニっぽいから)
東京タワー:スズキ GSX400Xインパルス(見た目)
ベコ:スズキ GSX750E(車体の大きさから)
アメザリ:スズキ GSX250L(アメリカン仕様のザリだったから)
トラザリ:スズキ GSX250T(トラディショナル仕様のザリだったから)
水牛:スズキ GT750(水冷エンジンとその見た目から)
怪鳥:スズキ DR750S/800S(高い走行性能とクチバシのようなフロントフェンダーから)
サンパチ:スズキ GT380(排気量がそのまま通称に)
ナナハンキラー:ヤマハ RZ350(750ccに劣らない高性能を称えて)
サンマ:ヤマハ TZR250(後方排気の仕組み「3MA」をサンマと読めるから)
ペケジェイ:ヤマハ XJ400(Xをぺけと呼んだから)
赤とんぼ:ヤマハ YA-1(スタイリッシュな見た目から)
パパサン:ハーレーダビッドソン XL883(排気量がそのまま通称に)
地域による違い
バイクの車名略称は地域によって異なることがある。たとえば、カワサキのZZ-Rを「ダブルズィーアール」と呼ぶ人がいれば、「ジージーアール」と呼ぶ人がいる。同じバイクでも地域や人によって呼び方が違うことがあり、その地域独自のバイク文化の発展や人気車種の変化も、略称の違いに関係している場合もある。こうした多様性が、バイク乗りの世界をよりややこしく・・・面白くしている。
車名略称のメリットとデメリット
メリット
バイクの車名略称は、愛車への愛が深まる事はもちろん、コミュニケーションもスムーズにする便利なツールだ。長い車種名を一々言うより、短い略称を使うことで会話が簡単になり、情報の伝達も効率的になる。特にバイク乗り同士では、省略された車種名により共通の理解が生まれ親近感が増す。
また、略称を使うことで、そのバイクへの愛着や思い入れを表現することもできる。そのなかで、もっとも重要なメリットとして、略称で会話が成立するとシンプルに嬉しい、が挙げられる。
デメリット
しかし、車名略称には意味が伝わらないリスクもある。特にバイクに詳しくない人には、略称の意味が分からないことがあり、コミュニケーションが難しくなる。また、同じ略称でも地域や時代によって異なる意味を持つことがあり、誤解が生まれることも考えらる。
略称を使うときは、相手が理解できるかどうかを確認することが大切だ。バイクを知らない若者や異性との会話の場合、大事故につながる可能性もある、ので注意が必要だ。
新しく生まれる略称
バイクの世界では常に新しい車種が登場し、それに合わせて新たな略称も生まれている。これらの略称は、車種の特徴や性能と流行を反映して増えていくものだ。新しい略称の登場は、バイクの魅力をさらに高めてくれると言える。
まとめ:バイク乗りはバイクを愛称で呼び続ける
バイクの車名略称は、バイク乗りの間での友情や信頼関係を育む上で重要な役割を果たしている。略称を通じてのつながりは、「コイツ、にわかライダーじゃないな」といった、お互いを認め合う効果もあるのだ。仮にその略称が公式見解である名称なら「知ってるね!」という評価となるし、独自につけた名称なら「いっちゃってるね!」の評価を頂けることになるのだ。
また、公式見解名称は、文化の継承という側面もある。車名略称文化は、先輩から後輩へと受け継がれていく伝統だ。ベテランのバイク乗りたちは、若い世代に車名略称の意味や由来を教え、文化を継承していく。このようにして、車名略称文化は、世代を超えて受け継がれ、バイク乗りたちの共通の文化として、これからも発展していくだろう。あなたがつけた愛車への愛称が公式名称になる可能性もあるのだ。