SUZUKI GSX-8S
SUZUKI SV650
スズキの息の長い人気車 SV650
今となっては貴重なV型2気筒エンジンのミドルクラス。最近のトレンドは2気筒のパラレル270°クランク。新型のV型2気筒エンジンではなく、スズキはやはり2気筒のパラレル270°クランクのGSX-8Sを登場させてきた。排気量は異なるがスズキのミドルクラスのメインとなるネイキッドの新型は名車と呼ばれるSV650を超えるものになるのか。
未だに根強い人気のSV650。乗りやすさと熟成されたV型エンジンは、年間売上ランキングにも常連のマシン。e50exhaust もその走りは一目置いていて何度も乗って感動している。一方で新設計のエンジンでスタイリッシュに登場したGSX-8Sでビーナスラインを走り、そのポテンシャルにスズキの意気込みを感じた。V型熟成エンジンとパラレル新型エンジンの対決はどちらに軍配が上がるのだろうか。
さすがSUZUKI
新しい時代の270°クランク
GSX-8S
スズキGSX-8S。
斬新なヘッドライトと精悍なスタイルで登場したスズキのミドルクラス。まず注目すべきはスズキが久しぶりに新型エンジンを搭載したマシンを作ったという事。しかも、270°クランクのパラレルツインを市場に出してきた。スズキといえば、Vストロームシリーズで定評のあるV型エンジンというイメージがある。SV650も古くなってきた今、新型のV型2気筒かと期待してしまったが、それはかなわなかった。
時代の流れは270°クランクのパラレルツイン。ヤマハもホンダもトライアンフも270°クランクのパラレルツインが売れている。スズキもその流れに乗ったようだ。低回転ではドコドコと鼓動を感じ、トルクも掴みやすくパワーを感じやすい。それでいて高回転もほどよく回してスピードも楽しめる。熟成された市場は高回転のパワー主義から、常用域の気持ちよいエンジンフィールへと求めるものが移行してきた。ワインディングに行って飛ばさなくても、ツーリングのスピード域でパワー感と自在性が楽しめる。
100馬力を優に超えるパワーを年甲斐もなく日本で使いきるには少々、無理があると気が付き始めたかのようだ。V型2気筒がそれに対して優位な出力構造を持っているのだが、部品コストとマスの集中化においてパラレルツインとの優位差に景気低迷、コスパ重視の市場に対して不利とにらんだのだろうか。残念ながらV型は採用されずに、よく似たトルク特性の270°クランクのパラレルツインが採用された。とするのが一般的な見解だ。真相はスズキさん、是非教えていただきたい。
GSX-8Sの新型エンジンは、そんな流行りの270°クランクのパラレルツインでも、異色を放った。通常の270°クランクのパラレルツインは低回転でのドコドコ感がウリなのだが、GSX-8Sの新型エンジンはとても静かなのだ。こんなに静かな270°クランクのパラレルツインは初めて。しかも、パワフルで掴みやすいトルクはそのままで不快な振動だけを抑え込んでしまった。この静かさは次世代の270°クランクのパラレルツインの先駆けとなりそう。
高回転まで回すと少し振動が大きくなる。高速道路を長く走っていると降りたときに手にしびれが来る。ただ、かなり振動はきめ細やかに抑えている努力がうかがえる。低速から高速まで、ほぼ満遍なくパワーデリバリーをするのはV型と近しい特性。202kgに抑えた車重よりも、操舵感は軽快で走りだすとクイックに操れる。アクセルを開けて一瞬、遅れてくるトルクがライダーに準備を与えるので扱いやすい。ガバっと開ければ、アグレッシブな加速とパワーが胸のすくようなスピードをもたらし、このあたりの乗りやすさはさすがスズキとうなずいてしまう。
コーナリングは若干、切れ込む傾向。セルフステアで入っていくとインに早くついてしまうので、いつもよりもアクセルを開けて入っていける。ハンドルに荷重してしまう初心者にはちょうどいい切れ具合。ベテランもビギナーも乗りやすいハンドリングだ。とにかく、楽しい。それは軽快で操りやすいから。
乗りやすく楽しい。これはSV650と同じ。特に自在性があるのは、共通している魅力。ただ、自在性を生み出すプロセスが違うのとGSX-8Sのほうが、少しアグレッシブに味付けされていると感じた。
●水冷4サイクル並列2気筒775cc
●最高出力80ps/8500rpm
●車重202㎏ ●シート高 810㎜
●価格:1,067,000円(税込)
熟成されたVツイン
時代に色あせない秀逸なエンジン
SV650
スズキSV650。
今では珍しくなってしまったミドルクラスのVツイン。丸目一灯のシンプルなネイキッドは、根強く人気で新型のGSX-8Sとの併売が決まっている。1999年に登場してから改良と熟成を重ねて現在に至る。V型ツインの乗りやすさと何と言っても安い価格が魅力。安かろうのバイクではない。これほどの自在性を持ったマシンはスズキの歴代の名車に引けを取らない。
基本設計は古い。今どき正立フロントフォーク。LEDではないヘッドライト。メーターもカラー液晶ではない。ライディングモードもなければクイックシフターもなし。3つのライディングモードが選べる電子制御もりもりのGSX-8Sと比べると装備の差は歴然。しかし、このV型2気筒エンジンは秀逸。素晴らしい。どの回転域でも、しっかりとトルクがありアクセルに対してリニアに反応する。そのリニアさは、けして唐突ではない。じわっと反応するのだ。
V型エンジンの特徴としての、このジワリ感。でもすぐさま分厚いトルクがやってくる。コレが実に絶妙なのだ。反応は素早く、伝達はマイルド、かつ瞬時にワイルド。実に扱いやすい。脳の命令にすぐさまマシンが反応する感覚。この自在性は、乗るとすぐにわかる。そして虜になる。欲しい時に欲しいトルクがすぐに得られる快感。そしてそれは一瞬のジワリと間を置きながらすぐさま力強く伝達される。
これがこのV型2気筒エンジンの秀逸さなのだ。
SV650は、エンジンの秀逸さだけではない。消してすごく軽いとは言えない199Kgの車体。しかし、操舵感はものすごく軽い。それは、V型のスリムな車体と秀逸なエンジンのリニアな反応が合わさって軽快さを出している。この組み合わせがマシンのバランスとして自在性を高めてクイックに操舵することができてしまう。ノーマルで、そうなっているが、サスペンションとタイヤを替えると、ソレはさらに進化する。ベテランがカスタムを加えてレース車両に使うことも少なくない。
バイクを操る楽しみ。これがSV650を一言で表す魅力だ。スピードを出しても出さなくても、このマシンは自在性という快感を伴ってライダーを満足させてしまう。初心者でも扱いやすい、785mmの足つき性や全域でのトルクの厚み。素直なハンドリングと唐突でないパワーデリバリー。大型バイクで手軽に楽しめてこの価格は初心者に勧めないわけがない。
一方でベテランも満足させてしまうのは、熟成によってどこの回転域でもトルクフルなエンジンと軽快なハンドリング。
サスペンションやタイヤをカスタムしていけば、より自分好みの速度域のコーナリングとV型の太いパワーバンドだけを引き出して速く走れてしまう。アグレッシブでもありクイックでもある。操舵感の軽さは正義なのだ。正直、サスペンション脆弱性と質感やシートの薄さなどは、この価格であるから仕方ないとあきらめがつく。ただ、走りの楽しさは絶対に外さないスズキのすごみが感じられる名車なのだ。これだけ長く年間売り上げランキングに常連なのはそういう理由がある。
●水冷4サイクルV型2気筒645cc
●最高出力72ps/8500rpm
●車重199㎏ ●シート高 785㎜
●価格:803,000円(税込)
どちらが優秀で
どちらが楽しいのか
コスパの戦いはいかに
結論としては、どちらもイイ。優劣がつけられない。最初は、正直、あの秀逸な熟成を重ねたSV650に勝てるはずがないと思っていた。130台以上、バイクに乗っているがSV650は名車と言って間違いない。
しかし、そこはさすがスズキさん、新型のGSX-8Sも素晴らしかった。ここまで初期型で仕上げてくるとは驚きだった。自在性はもちろん、アグレッシブで軽快なハンドリング。乗りやすい。そして楽しい。
270°クランクのパラレルツインに新たな静寂性と自在性をもたらす次世代のエンジンと感じた。熟成していったら、今後はSV650を超えていくかもしれない。そのくらい完成度が高かった。自在に動き、軽快で楽しい。これが共通している部分。GSX-8Sの方がよりアグレッシブなストリートファイター的な要素がある。コーナリングはSV650の方が少し速い気がした。そこはV型の優位性か。
コストパフォーマンスも優劣つけがたい。もちろん、SV650はコスパ最強だが、排気量UPと電子制御やLED、カラー液晶メーターなどの装備で税抜き100万円を切ってきたGSX-8Sもコスパはいいと思う。楽しさは乗ってもらうしかない。どちらも楽しい。この後のGSX-8Rの登場も、またマシン選びを迷宮入りにさせそうな予感がしている。迷っているうちが一番楽しいかもしれないが。