【brand pickup】
1978年に登場した空冷直列6気筒エンジンを搭載したCBX。
1960年代にロードレース世界選手権で戦っていた6気筒エンジン搭載のワークスマシンを原点とし、圧倒的な強さからレギュレーションで6気筒エンジンが禁止された歴史がある。
大きく左右に張り出したエンジンの存在感は圧倒的。一代限りで終わってしまったCBXだが、今でもその威風堂々とした魅力からファンは多い。
メンテナンスをはじめカスタムを得意とするバイクショップのリモーション代表の横川さんもそのひとり。ホンダのCBXやCB-Fといった車両を得意とし、どんな作業であっても真摯に向き合う姿勢からCBXオーナーからの支持は厚い。
メンテやカスタムを行い日々バイクと向き合っている横川さんだけに、工具に対する見方もシビアだ。
その工具の中でも必須アイテムの一つ『ラチェットレンチ』。
ラチェットレンチで定評のある『Ko-ken(コーケン)』の製品を実際に手にしてもらい、工具に求めるもの、ラチェットレンチの種類とポイント、Ko-kenのラチェットレンチの特徴を語ってもらった。
プロメカニックが工具に求めるものとは?
世の中にはあらゆる工具が溢れている。
ホームセンターで販売されている100点セット3980円という安価なものから、メカニックが使う1本数千円のドライバーまで幅広い。実際に何を選んでいいのか迷ってしまうもの。安価な工具と、工具メーカーがしっかりと作ったものはどこが違うのだろうか?
「耐久性、精度がまず違いますし、ネジやボルトを回すといった場合はそのアプローチの仕方がしっかりと考えられています。
耐久性や精度はイメージしやすいと思います。
スパナを例に取ると、安価な製品は素材が柔らかいため、作業を繰り返すと口の部分が徐々に開いてきてしまうことがあります。
そうなるとボルトの頭をしっかりと保持できずナメてしまう原因になります。
ドライバーの精度が低ければネジの頭にピッタリとはまらず、力をしっかりと伝えられず、同じようにナメてしまう要因となります。
工具メーカーが作った製品は、耐久性や精度もしっかりとしているので、この点の不安要素はありません。
さらにネジやボルトを回すといった場面で、工具メーカーではネジやボルトのどの部分に力をかけたら確実で効率よく作業ができるかというのを考えて作っています。安価な工具だとここらへんのことは考えられておらず、とりあえずネジやボルトをつかめればよい、という製品がほとんどです。
工具メーカーの製品なら、ボルトやネジの頭をナメるという失敗をするリスクは軽減できます。
メンテナンスビギナーこそ、ちゃんとした工具を選んでほしいですね」
一見同じように見える工具だが、安価な工具と工具メーカーのものとは、使ってみたら目からウロコが落ちるほど違うのはこのようなところに理由があるのだ。
プロメカニックにとってのラチェットレンチの存在とは?
ラチェットレンチとは、ソケットの正転・逆転が切り替えでき、ラチェット機構によって本体を挿し換える必要がなく反復させるだけで締め付けができる工具のこと。ボルトやナットのサイズに合わせてソケットが変更できる。ホームセンターにも置かれている定番工具の一つだ。
「整備で日頃から使っているので、その存在意義は考えたことがなかったです(笑)。
整備には欠かせない工具で、これがなかったら作業効率は確実に落ちますね。
ボルトやナットを締めたり緩めたりするときに、ボックスレンチだとその度に挿しなおさなければなりません。
でも、ラチェットレンチならその必要がないので、作業時間を短縮できます」
ラチェットレンチでも大きさが違ったり、ラチェット機構で使われている歯車の数が異なったりする。
一体何を基準にしたら良いのだろう?
「ラチェットレンチのソケットは、差込角が1/4(6.35mm)、3/8(9.5mm)、1/2(12.7mm)と主に3つあります。
バイクの整備でよく使うのは3/8(9.5mm)で、中間的なサイズですね。
ハンドル部分のサイズも短いのから長いのまでありますが、よく使うのは手のひらと同じぐらいのサイズ、20cmぐらいのものです。
ラチェット機構で使われている歯数もいろいろありますよね。36歯、72歯、90歯……中には120歯といったものもあります。
歯数が多いほうが少しの振り幅で作業が可能です。クルマの整備で手を差し込みにくい狭いエンジンルームのような場面で作業するなら細かい歯数も必要かもしれません。でもバイクを整備するのであれば、手が入りにくい場面はさほどないはず。72歯もあれば十分です」。
Ko-kenのラチェットレンチの使い心地は?
Ko-ken(コーケン)とは、静岡県に本社を置く日本の工具メーカー・山下工業研究所の工具ブランドだ。
工具というと海外の有名メーカーを思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし、日本の工具メーカーも海外のメーカーに引けを取らない物作りから、高い支持を受けているのだ。このKo-ken(コーケン)もそんなメーカーの一つ。ラチェットレンチのような駆動工具を得意とし、世界に名だたる高級工具メーカーに並ぶ人気をもっている。
「Ko-ken(コーケン)の私の中のイメージとしては、武骨で丈夫ですね。アタックドライバーとかインパクトソケットなど使っています。
今回のラチェットレンチのセット『3285ZE』は、エントリーセットという立ち位置ですが、内容はかなりいいです。
無骨なイメージだったKo-ken(コーケン)ですが、このソケットレンチのZ-EALシリーズはスタイルも洗練されていますね!
コンパクトなラチェットレンチで、メカニックスタンダードと呼ぶにふさわしい使い勝手が気に入りました。
歯数は72歯もあるので、振り幅が小さくてすみます。
なによりこのZ-EALシリーズでいいのは、空転トルクが軽いことです。
空転トルクとは?と思うかもしれませんね。
ボルトを締めていく初期の段階で、この空転トルクが重いラチェットレンチだと、ボルトを締めて任意の位置まで手を戻す動作の時に、ソケット部分も一緒に回転してしまいます。空転トルクが軽いものだと、ボルトを締め込んだところにソケットも留まり、ラチェットレンチだけが任意の位置まで戻すことができます。
この違いが、作業効率につながるのです。
空転トルクが重いと、片手でラチェットレンチを握り、もう片方の手でボルトに当てたソケットを抑え込み逆回転しない動作が必要です。
空転トルクが軽ければ、わざわざ両手を使う必要はありません。
セットなっているソケットはボルトの形と同じ6ポイント(6角)。作業性なら12ポイント(12角)に分がありますが、メンテビギナーでもより確実な作業ができることを考えたら6ポイントのほうが安心です。
ソケットは7サイズ用意されていますが、これもバイクの整備でよく使うものが入っています。
クイックスピナーも入っているので、これを組み合わせれば、ボルトを締め込む最初の段階でより早く作業できます。
驚きなのが、ここまでしっかりした作りで必要なものがセットになっているのに、希望小売価格が19500円なのは安いと思います。
メカニックだったら工具は消耗品ですが、休日にメンテナンスするようなサンデーメカニックなら、ほぼ買い替えることなく使えるんじゃないでしょうか?
粗悪品を買ってボルトをナメてしまったり、工具を再び買い替えることを考えたら、最初にちゃんとした工具を購入することは賢い選択です。
いい工具なら無駄な失敗をしなくなりますし、なによりメンテナンスが楽しくなりますよ!」
Ko-ken ラチェットレンチ Z-EALシリーズ
『3285ZE エントリーセット』
使用頻度の高い基本的なサイズのショートソケットとクイックスピンナー、空転トルクが小さい最新設計の72歯ラチェットハンドルのセット。
内容:ラチェットハンドル 3400MZ
6角ソケット(8、10、12、13、14、17、19mm)
クイックスピンナー、ソケットレール
希望小売価格:19500円(税抜)
一緒に揃えたいエクステンションバー
『3760Z-125 Z-EAL エクステンションバー』
各部の精度を追求することにより優れた使用感を実現したエクステンションバー。
新形状ボールディンプルの採用によりガタツキの少ない接合を実現している。
ラチェットレンチ Z-EALシリーズ『3285ZE エントリーセット』を使うなら合わせて購入しておくと、奥まった場所のボルト、ナットの締め付け作業時に便利だ。
希望小売価格:1910円(税抜)
取材協力:Remotion(リモーション)
〒188-0012 東京都西東京市南町1-5-11-1F
TEL:070-8969-3412
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