前編YAMAHA テネレ700
DUCATI デザートX
KTM 890アドベンチャー
後編SUZUKI Vストローム650
TRIUMPH タイガー900GT
YAMAHA トレーサー900GT
前編はテネレ700、デザートX、890アドベンチャーでしたが
今回の後編は、Vストローム650とタイガー900GTとトレーサー900GT。V型と並列3気筒のアドベンチャーバイク。Vストロームは800DEも出ましたが、Vストローム650も併売。トレーサー9GTも出ていますが基本的な走りは同じととらえています。
リッター以下、でも大型バイクのパワーと余裕を持ったミドルアドベンチャー、イイのあります。1000cc超えていなくても日本では十分に走ります。普段に使うにも使いやすい。コンビニにも気軽に行けるミドルクラス。e50exhaustが前編と後編分けて6台の走りをお伝えしていきます。
とにかく気楽
長距離も疲れない
スズキ Vストローム650
スズキのVストローム650。基本設計は少し古いがこれは名車。
スズキの熟成されたV型2気筒エンジンの秀逸さ。消して軽い車体ではないのに軽快な操舵感。なにより疲労感が少ない。それは緊張感があまり強いられない乗り味だからだ。なぜか自然に膝が開いてきてしまう。ニーグリップを忘れるくらい楽ちんに乗れてしまうのだ。
このV型2気筒エンジンは、どの回転域からでもすぐにトルクを持ってきてくれる。コーナーでギアを間違えてもアクセルワークで何とかなってしまうくらい。しかも、そのトルクはいきなりズドンと来るのではなくジンワリとパワーが入ってくるので扱いやすい。バックトルクもしかり。それでいてレスポンスもとてもイイ。ライダーの思うとおりにコントロールができてしまうのだ。
スズキが並列2気筒の800DEを新開発しても、このV型2気筒を残すのには長年の熟成が生んだ秀逸な性能が今後の開発で難しいからだと思う。コストや排ガス規制でこのV型を超えるものは作れないのではないか。そしてこのエンジンを活かした細身の車体が自在性を与え、ストレスの少ない走破性を生み出している。ほんと緊張感なく乗れてしまう。アドベンチャーバイクにしては足つきも悪くないしポジションは楽。
なぜもっと早く乗っていなかったのだろうと後悔したほど。
べた褒めはしたが欠点もある。サスペンションとウィンドプロテクションだ。サスペンションはちょっとした道路のへこみや轍をもう少しいなしてほしい。高速巡行は問題ないが酷道のコーナーは苦手。風除けも清流効果が弱い。特にヘルメットの正面に乱気流がある。ロングツーリングだと気になるかもしれない。ただ、総合点は非常に高く価格は100万を切るのは驚異的。ぜひこのまま売り続けてほしい名車だ。
●水冷4サイクルV型2気筒645cc
●最高出力69ps/8800rpm
●車重212㎏ ●シート高 835㎜
●価格:957,000円(税込)
むしろオンロードバイク
3気筒のサウンドも魅力
トライアンフ タイガー900GT
トライアンフの3気筒アドベンチャーバイク。
タイガー1200もあるが、小柄で扱いやすい900GTをお勧めしたい。アドベンチャーバイクというよりも積載性の高いオンロードバイクというイメージのマシンだ。タイガー900はラリーもある。どちらかというとラリーの方がアドベンチャーバイクかもしれない。あえてGTなのは他の5台に無い個性があるから。
イメージしやすいのはスズキのVストローム250の上位互換。
かなり乱暴な例えになるがオンロードバイクなのですよコレは。サスペンションが特に柔らかいわけでもなく走破性もモタツキがない。キビキビ走ります。ま、タイヤだけはフロント19インチ、リア17インチなのでコーナリングはちょっと違いますが、他はオンロードバイク。足つきも良い810mm。
トライアンフの3気筒エンジンはとても扱いやすい。
ヤマハの3気筒とは違いマイルドでパワーもある。低速はトルクを使ってスッとスタートできるし、高速は、どちらかというと4気筒の感覚でよく回る。サウンドこそ高音のジェットエンジンのような音だが、むしろそのサウンドがいい。2気筒と4気筒のイイとこ取りのエンジンだ。
トライアンフは外車ながらも国産車に近いクセのないマシンが多い。逆に言うととんがった部分は少ないかもしれない。もちろん全部のトライアンフがそうではないのだけれど3気筒エンジンは特にクセがない。さらに装備がいい。ブレーキはブレンボだしマルゾッキのサスペンションも良い。カラー液晶メーターやシートヒーター、クイックシフターなどコストパフォーマンスの良さも魅力。なにより大柄でないからコンビニにもすっと出せる。気軽に普段使いできるアドベンチャーだ。
●水冷4サイクル3気筒888cc
●最高出力95.2ps/8750rpm
●車重198㎏ ●シート高 810㎜
●価格:1,655,000円~(税込)
カッ飛びアドベンチャー
峠をあきらめない
ヤマハ トレーサー900GT
ヤマハのトレーサー900GT。すでに新型のトレーサー9GTが登場している。
MT-09やXSR900と同じエンジンを積んだアドベンチャーバイク。もちろんデチューンはされているが基本的には3気筒のパワフルマシン。Aモードはまさにじゃじゃ馬。とてもアドベンチャーバイクのレスポンスとは思えない。トライアンフの3気筒とも違うカッ飛びマシンだ。
このヤマハの3気筒エンジンもかなり熟成を重ねている。
初期型のヤンチャぶりはちょっと閉口するほどだったが、代を変わるごとにマイルドに扱いやすくなってきた。それでもAモードは過激なパワーをズドンと出すエンジンで、ハンドルがアップライトなのが不思議なくらいレーシーなコーナリングだった。ワインディングはスタンダードモードで十分なくらい。
だからアドベンチャーバイクに乗ってもワインディングを爽快に駆け抜けたい人にはもってこい。
前後17インチのクイックなハンドリングとトルクフルで強いレスポンスを繰り出す3気筒エンジンだから軽快に速く旋回してくれる。サスペンションも硬めなのでしっかり粘るから安心してアクセルを開けることができる。乗っていると果たしてこれはアドベンチャーバイクなのだろうかと疑問を抱くほど速い。
Aモードはアクセルワークを繊細にコントロールできないと危ない。
初心者は一番優しいBモードから慣れた方がいい。レスポンスが少し鈍くなるだけでパワーは健在。少し雑なアクセルワークでもギクシャクしないで楽しめるだろう。そういう意味でも電子制御のライディングモードというのはすこぶる利便性が高い。積載性も良いしクルーズコントロールやグリップヒーターもあるのでちゃんとアドベンチャーできるバイク。でも峠は攻めたい人にはこれ一択。
●水冷4サイクル3気筒845cc
●最高出力116ps/10000rpm
●車重215㎏ ●シート高 850㎜
●価格:1,221,000円(税込)
いかがでしたか。6台のミドルクラスのアドベンチャーバイク。
前編のしなやかなテネレ700、アグレッシブなデザートX、低重心のじゃじゃ馬890アドベンチャー。今回の後編の疲れ知らずのVストローム650、オンロードバイクのようなタイガー900GT、そしてワインディングもイケるトレーサー900GTとそれぞれの違う個性が伝わったでしょうか。6台ともに実際に乗って走って楽しんだインプレッションです。みなさまの参考になれば幸いです。いやあ、アドベンチャーバイクはこれからも人気が続きそうですね。