「原チャセンサー」と呼ばれ、親しまれてきた排気量50ccのバイクが、排ガス規制や販売台数の減少によって消滅しようとしています。125ccクラスを原付扱いにすることも健闘されており、ますます縮小傾向になることでしょう。強烈な個性を放ったスズキの原チャリを紹介します。
俺様が元祖だ! 「ハスラー50」
「ハスラー」と言えば、クルマを思い浮かべる人が多いと思いますが、最初はバイクに付けられたネーミングでした。1971年に「初代ハスラー50」が発売。専用のモトクロッサーキットパーツを装着することで、本格的なレース走行ができるバイクでした。その後、1980年にモデルチェンジが行われ、馬力が6ps/8500rpm→6.7ps/8500rpmにアップしています。
メーカー名:スズキ
車名:ハスラー50 (初代)
重量:69.5kg
エンジン:空冷2サイクル単気筒 ロータリーバルブ
排気量: 49cc
最高出力:6ps/8500rpm
1983年に最後のモデルチェンジが行われます。タイヤサイズが前輪19インチから21インチ、2本サスからモノサスとなり、より走破性が向上しました。「名車」と呼ばれながら、力尽きてしまったのか、スズキはこれ以降50ccクラスの市販ダートバイクを製造していません。
メーカー名:スズキ
車名:ハスラー50
重量:77kg
エンジン:水冷2サイクル単気筒 ピストンバルブ、リードバルブ併用
排気量: 49cc
最高出力:7.2ps/8000rpm
2015年に開催された東京モーターショーでは、スクーター版ハスラーが参考出品されていました。クルマの「ハスラー」の売れ行きが好調なようなので、当分はバイクの名前に使われることはないでしょうね。
自虐的なネーミングがスズキらしい!なんちゃってレプリカ 「GAG」
「GAG」は1986年に発売されました。見た目は一世を風靡したGSX-Rそっくり。フルカウルを装備した「なんちゃってレプリカ」です。パワーユニットは、ビジネスバイク「バーディ」のエンジンであり、見た目ほど早くないので「ギャグ」という絶妙な車名が付けられました。さすがはイジられやすいスズキ。自虐が冴えています。
メーカー名:スズキ
車名:GAG
重量:64kg
エンジン:空冷4サイクル単気筒 SOHC2バルブ
排気量: 49cc
最高出力:5.2ps/7000rpm
これがGAGのベースとなった「バーディ」です。エンジンは少しだけ高回転型にパワーアップされました。このバイクからレプリカっぽいバイクをインスピレーションするとは!まさに発想の転換ですね。
メーカー名:スズキ
車名:バーディ
重量:66kg
エンジン:空冷4サイクル単気筒 SOHC2バルブ
排気量: 49cc
最高出力:5.0ps/6500rpm
キャッチフレーズは「遊びゴコロをフルカウル」。そのフレーズ通り、カウルをキャンバスに見立てて、グラフィックを変更した「レプリカ」、「バトルプレーン」、「ポップアート」、「ピンクス」の4つのバリエーションをラインアップしていました。
♪アナタもオオカミに変わりますか~ 「ウルフ50」
1989年に発売された「ウルフ50」は、1982年に発売された「RG50ガンマ」からカウルを取り去ったネイキッドバイクです。古びたパワーユニット、ガンマの角型フレームにカバーを取り付けただけの「なんちゃってツインフレーム」など、突っ込みどころ満載のバイクでした。スズキはこれまでも、ウルフのネーミングを使った異なるバイクを発売してきました。今後も新しいウルフが誕生するかもしれませんね。
メーカー名:スズキ
車名:バーディ
重量:73kg
エンジン:空冷2サイクル単気筒 ピストンバルブ、リードバルブ併用
排気量: 49cc
最高出力:7.2ps/7200rpm
マジ、マジ?ストマジ! 「ストリートマジック」
「ストリートマジック」は、1997年に発売されました。一般的には「ストマジ」と呼ばれています。「マジ、マジ」と連呼していたのは、ヤックンこと薬丸裕英さん(シブがき隊)。ちなみに「シブがき隊」というトリオ名は、公募した際に薬丸さんが「渋い名前つけてくれよな」といったことに起因していると言うウワサです。いや、100%…SOかもね!
ストマジはスクーターのパワーユニットを、バイクのフレームに積み込んだ遊び心のある一台です。ミッションはオートマチックで、スポーツモデルの「ストリートマジックS」や、オフロードっぽくアレンジされた「ストリートマジックⅡ」、排気量を拡大した110ccも販売されました。カスタムしても楽しく、わりと人気がありましたが、2006年11月に自動車排出ガス規制の変更に伴い生産終了しています。
メーカー名:スズキ
車名:ストリートマジック
重量:73kg
エンジン:空冷2サイクル単気筒
排気量: 49cc
最高出力:7.2ps/6750rpm
スズキ伝統のオヤジギャグ的ネーミング「チョイノリ」
「チョイノリ」は、2003年に発売されたスクーターです。ちょっと乗るから”チョイノリ”。「バイクに乗るならこれだ=コレダ」、「あると便利=アルト」の流れを汲む、スズキお得意のオヤジギャグ的ネーミングです。
もちろんダジャレだけのバイクではありません。「国内生産で5万9,800円の低価格」という驚きのプライスを引っ提げて登場しました。2000年に発売されたスクーター「ZZ」が約19万円、2004年発売で格安と言われた「レッツ4」でも約10万円。ママチャリ並みの価格です。
安さの秘密は、コンパクトな設計と、部品点数約3割削減、ボルト・ナット類約5割削減など、企業努力によるもの。フロントは縁日のお面のように薄っぺらだったり、シート下がスカスカだったり、昆虫のような見た目が生理的に受け付けなかったりしますが、そのおかげで乾燥重量39㎏という11歳女子の平均体重ほどの重さに納めています。
安いなりに不便なことも多く、サイドスタンドや左ミラー、セルスターターもないのでキックで始動。さらにはリアサスもないリジッド仕様で、分厚いシートがサス代わりです。燃料計やタコメーターもオドメーターもありません。翌年発売された後期型では、さまざまな箇所が改良されて、価格が69,800円になりましたが、それでも激安。「驚安の殿堂ドン・キホーテ」もビックリな価格を維持していました。
メーカー名:スズキ
車名:チョイノリ
重量:39kg
エンジン:空冷4サイクル単気筒 OHV2バルブ
排気量: 49cc
最高出力:1.5kW(2.0ps)/5500rpm
原チャリは、たった50ccの小さなエンジンに大きな可能性が詰まっていました。クルマの免許でライドできるので、バイクの楽しさを感じてみてください。