今回は、新年度スタートと同時に施工された「自転車用ヘルメット着用努力義務化」と自転車事故について考えてみようと思います。
「自転車ヘルメット着用」には抵抗感がある!
昨年度から、マウンテンバイク(MTB)ヘルメット着用での通勤をしています。正直、ヘルメット着用に関して抵抗感が無かったわけではありません。しかし、令和4年度中の自転車乗車中の事故統計を調べてみた結果、納得の理由がありました。
Q:頭の中には、何が入っている?
日々の教習業務には応急救護処置に関する教習も担当することがあります。その中で特に強調してお伝えしていることは「酸素を脳へ」ということ。脳に酸素が無くなると死に至る恐れがあり、心停止の状態だとしても脳機能が失われていれば同じ結果になります。私たちは日々の生活を送る上で「心停止の予防」と「頭の防御」を怠らないため、自動車や自転車を乗車するときは安全運転を行うことが必須条件となります。
自転車事故の統計
自転車乗車中死者数の約3割以上が「〇〇〇」だった!
令和4年度中の自転車乗用中死者数(第1・第2当事者)は、全体で336人。このうち65歳以上が220人で約6割以上を占めています。バイクや自動車を運転する場合、特に自転車乗車中の65歳以上の方に注意しましょう。
法律では、車両等とは、車輪で移動することができる乗り物をいいます。車いす(電動含む)は歩行者、スケートボード等は玩具として扱われています。これは学科試験の「あるあるワード」です。
自転車・二輪車それぞれのヘルメット着用率を調べてみた。
令和5年3月2日 警察庁交通局「交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締状況等について」の報告を元に、バイクと自転車それぞれの「ヘルメット着用有無別死者数」を比較してみました。調べによると、バイク乗車中の非着用の構成率は2.9%となり、9割以上のライダーはヘルメットを着用しているとのことでした。
・・・対して自転車利用者はというと、令和4年度自転車乗車中の着用率は4.1%となっており、9割以上はヘルメット非着用ということになります。このように、バイクライダーはヘルメットを自ら進んで着用しているからこそ、高い着用率を維持しているように思います。自転車利用者の着用率を向上させるにはバイクライダーのように自発的に着用するための環境を醸成する必要があるのかもしれません。
小学生(39.1%)中学生(25.0%)という着用率の要因として,
家族や学校からの言いつけや校則を守ることが考えられます。
自転車事故がヤバい理由
近年、公安委員会や交通安全協会、指定自動車教習所が自転車運転マナー向上における活動を盛んに行っていることをご存じでしょうか。自転車の事故実態を覚えておき、自転車乗車する際の安全意識を高めていきましょう。
「自転車 対 歩行者」の構図がヤバい!!!
令和4年度中の「対 歩行者」事故に関するデータをみると重傷者が圧倒的に多い事がわかります。衝突地点を調べた結果、312人のうち、122人の方が「歩道」で衝突し、次いで交差点が77人となっているようです。また、原則的に自転車は車道を走行することになっていますが、13歳未満の児童や70歳以上の高齢者等は例外的に歩道の走行が認められているため、事故を起こしやすい条件が揃っているといえます。
自転車事故の賠償金額がヤバい!!!
もしも自転車事故を起こし、被害者に後遺障害が残って場合は膨大な賠償金を支払う可能性もあります。中には裁判により、判決で9000万円以上の賠償を支払うよう命じられた判例もあり、小・中学生や高齢者に対して多額の賠償金額請求される事例も存在しています。
前方を見てない自転車の運転者がヤバい!!!
自転車の法令違反別の円グラフに「安全運転義務違反 219人 70.2%」と記載されています。自転車は気軽に乗れる反面、安易なハンドル操作や割り込みといった判断が事故を招いています。そして自転車乗車中の携帯電話やスマホの「ながら運転」や夜間における「無灯火走行」は未だに散見しています。自動車に乗車する際は、自ら危険が発見し、逆に運転するドライバーが発見しやすい乗り方や装備を整えなくてはなりません。
自転車を利用する際は、こんなライダー(ドライバー)に気をつけろ!
悲しいことに自転車は、自動車やバイクからみると甘く見られたり、邪険に思われることがあるようです。私自身、MTB愛好家ですが運転中に心無い運転者にそのような感情を向けられたこともあります。他人の「考え」を変えることは難しいため、” 車両等 ”に乗車するすべての人は寛容さをもって「安全運転」に努めなければなりません。自転車は後方の状況を確認しずらいため、たまに振り向くなど後方の安全に注意を向けましょう。
脳内の酸素を絶やさない!
日々安全に過ごすには目先の快楽や手軽さに対して理性を働かせることもが重要です。普段は簡単に回避できる小さな危険も、運転中に理性を失えば問題の本質を見落とし大きな事故になってしまいます。自動車やバイクや自転車の運転の際、「頭ニ血ガ上ル」事があったとしても、脳内の酸素が少なくなっているということかもしれません。適度な休憩を取り「頭ヲ冷ヤス」ことも大事な運転の一つです。
まとめ
エアバッグやヘルメット、シートベルトや自動ブレーキ・・・ライダーやドライバーの命を守る技術は次々に開発されていますが、自転車も自動車も「最終的には運転する人次第」。私たち人間は目の前の社会問題の本質をとらえて理性で解決してきました。令和5年4月に施行された「自転車乗車時のヘルメット着用努力義務化」についてもその理由と本質をとらえて、無用な犠牲を減らしていきませんか。