今回ご紹介する内容は、交通事故現場における応急救護処置について。交通事故現場は状況が常に変化します。したがって短時間で救助方法の最適解を判断し実践に移す事が求められます。同時に交通事故の続発を防止しなければならず、安全を確保しながら行う人命救助は困難を極めます。万一のアクシデントに備えて、交通事故や予期せぬケガへの対処法を心得ておくと良いかもしれません。
バイクを運転は不安定な車両特性であることは明らかです。したがってツーリングは日常生活と比べて事故に遭う可能性が高くなると考えます。交通事故によるケガ、または事故現場に居合わせた場合に機転を利かせ、ライダーの意義を発揮してあげましょう。
バイク事故の特徴と対処
バイク事故は「交差点は出合頭事故(右直事故)が多い」「バイクは右カーブの事故が多い」等、事故傾向を予測しておくことが大切です。
事故の続発に注意
交通事故現場においては事故の続発防止措置を講じなくてはなりません。事故現場に差し掛かった人々は、事故車両等に気を取られ脇見運転をしており事故が発生しやすい条件が揃ってしまうのです。事故現場付近の危険性をあらかじめ把握しておき、救助者自身が事故に巻き込まれないように行動することが求められます。
1.負傷者を移動せよ!!
負傷者の容態や受傷の程度を観察して、道路上で転倒している場合は直ちに安全な場所へ移動させましょう。移動が困難であると判断した場合は交通整理等を行い安全な状況を確保しましょう。さらに、119番通報や負傷者の移動などを行うため、付近に協力者が居ないか助けを求めてください。ライダーであれば、脚部や頭部、胸部にダメージを受けている可能性が高いので、負傷箇所に配慮した移動方法を取りましょう。
2.救急車を要請する場合
負傷の程度に応じて救急車を呼ぶか否かということを考えましょう。ここでは、ツーリング中の事故を想定した救急車要請の程度についてをご紹介していきます。
軽傷・意識あり(擦り傷、切り傷等)
バイク事故は車体のパーツが広範囲に散乱するため、大きな事故に見えてしまうこともあります。ライダーの意識や呼吸の確認と、脚部に外傷や骨折等を確かめておきましょう。負傷していても受け答えや歩行できる程度であれば自力で病院へ行ってもいいでしょう。ただし、出血が目立つ場合はガーゼや清潔なハンカチ等で傷口を抑え止血(直接圧迫止血)しなければなりません。容態によっては現場の判断で119番通報を行いましょう。
軽傷・意識無し
呼びかけに反応が無く、意識が無い場合は直ちに救急車を要請しましょう。また、10秒ほど呼吸を観察して普段どおりの呼吸(10秒間で3回程度)が見られない場合は、直ちに胸骨圧迫等の心肺蘇生をおこないます。協力者が居る場合は救急車の要請や心肺蘇生を手分けして救護活動を行いましょう。
・胸の高さが約5センチ沈む程度
・心臓マッサージの方法は、100~120回/1分
・胸骨圧迫の中断は最小限に。
重傷・意識あり、または意識無し(骨折、大出血、熱傷、皮膚の蒼白等)
直ちに救急車を要請してください。骨折している場合は負傷部分を冷やすとよいでしょう。外出血がみられる場合は直接圧迫止血をすることで血液の喪失を抑えることができます。救急車が到着するまでのわずかな時間に処置を実践できるよう応急救護処置は知識は覚えておいて損はありません。最悪の事態を回避するには現場の救護活動が重要です。
警察官へ報告せよ!
交通事故が発生した場合、警察官へ必ず報告しましょう。事故の程度が大きい場合、交通整理や交通規制を行ってくれます。また、事故の当事者は「交通事故証明」を受けることで、後日保険手続きを受けることができます。警察官への届け出が無い場合、保険手続きの際に困ることがあります。
応急救護処置に関する詳細は下記URL↓
総務省消防庁 一般市民向け応手当WEB講習https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/06ichiran/index.html
JRC 日本蘇生協議会
バイク事故は火災発生に注意!
バイクにはガソリンタンクが備え付けられています。バイクは転倒した際にガソリンが漏れ出す仕組みになっている場合があり、引火する危険性が極めて高い乗り物です。対して、四輪車は運転者や同乗者へのダメージを軽減するため。ボンネットやトランク部分は潰れやすい構造にし、クッションの役割を与えた「衝突安全ボディ」が採用されている車体が多くなっています。
特に出合頭事故や交差点における右直事故等は、燃料タンクへの損傷により「爆発的な火災」が発生する可能性があります。したがって、事故現場に居合わせた場合は周囲に漂う「燃料の臭い」に敏感になり早期に異変を察知しましょう。
ヘルメットに備えられた「着脱装置」をご存じ?
現代のヘルメットの中には負傷しているライダーのヘルメットを安全かつ効率的に第三者が着脱できるシステムが備わっていることはご存じでしょうか。Arai製ヘルメットは“EMERGENCY TAB”と呼ばれ、SHOEI製ならEmergency Quick Release System、OGK KABUTOならエマージェンシーシステム(PAT.P)というように、第三者が容易にヘルメットの着脱ができる構造を有するモデルがあることをご存じでしょうか。転倒した傷病者の頸部を動かすことは厳禁ですが、緊急用着脱システムを活用することで症状の悪化を防ぐことができるかもしれません。
まとめ
私自身の経験ですが、転倒して動けないライダーのヘルメットを脱がす際に”EMERGENCY TAB”を使用したことがあります。交通事故現場においては、居合わせた人の機転の利かせ方によって大きく結果が変わるのではないでしょうか。