バイクのキャラクター、特徴はエンジン型式が大きく影響する。
構造がシンプルで軽量な単気筒。
爆発間隔やシリンダーの配置で個性が全く違う2気筒。
高回転までよどみなく回る4気筒。
振動が少なく、まるでクルマのようにシルキーな6気筒。
気筒数が増えるほどに高回転時の出力が上がり、最高速度も高くなる。
そのかわり、燃費効率の低下、構造が複雑になるなどのデメリットも出てくる。
航空機エンジンでは高出力化を狙い、クルマでは考えられないような多気筒エンジンが当たり前だったりする。
第2次世界大戦中の主力エンジンは14気筒(星型7気筒を2列)、18気筒(星型9気筒を2列)で、中には28気筒エンジン(星型7気筒を4列)も存在した。
さて話を戻すと、エンジンの気筒数で特徴は変わるのだが、奇数の気筒数を搭載したバイクは思いのほか少ない。
5気筒で思い浮かぶのが、ホンダのモトGPマシン・RC211V。
これはレギュレーションで4気筒エンジンと5気筒エンジンの最低重量が同じだったため、より高出力化が望めるということで5気筒エンジンを採用した。
では3気筒エンジンは?といえば、過去にはカワサキのマッハシリーズ(750SS、500SS、SS400、SS350、SS250)スズキのGT750といった車両が存在した。
現在ではトライアンフが3気筒エンジンのモデルをラインナップしているのが有名だ。
3気筒エンジンの利点とは?
2気筒エンジン、4気筒エンジンのいいとこ取り!と言われる3気筒。
具体的に3気筒の何がいいのか?
タンテキに言ってしまえば、
・3気筒は4気筒よりもエンジンの幅をコンパクトにでき、車体をスリムで軽量に作りやすい。
・4気筒よりトルク感がある。
・2気筒スポーツモデルより安定感があり、4気筒より軽快な運動性能。
まさに2気筒と4気筒の中間という立ち位置だ。
2気筒より安定感があり4気筒よりも軽快なのは、クランクシャフトの長さにも由来する。
回転する物体が軸方向を留めようとする効果=ジャイロ効果と呼ばれ、クランクシャフト(回転軸)が長いほど、ジャイロ効果は強くなる。
2気筒よりもクランクシャフトが長い4気筒の方が安定感があるのはこのためだ。
その2気筒と4気筒の中間である3気筒は軽快感と安定感を併せ持ち、いいとこどりのエンジン型式といえよう。
ではなぜ3気筒エンジンが少ないのか?
それは技術がいるからだ。
エンジンで発生する振動をどう制御するか?
ピストンの往復運動で生じる振動。
非常に乱暴な説明だが、シリンダー数は偶数の方が振動を制御しやすい。
3気筒ではピストンの往復運動で生じる振動をいかに減らせるかがポイントで、
3気筒エンジンを長くラインナップしているトライアンフでは、クランクの角度と点火タイミングによって振動を打ち消している。
不快な振動は排除しつつも、4気筒にはない独特な“バララララッ”とした鼓動感があり、路面を掴んでいる感覚を4気筒エンジンよりも強く感じることができる。
3気筒エンジン搭載のストリートトリプルに注目!
トライアンフが3気筒エンジンを搭載した初めてのモデルは1968年のトライデントT150。
最高速度は時速200kmに達する高性能を誇った。
1994年にはそのトライアンフから水冷3気筒855ccのスピードトリプルが登場。
2006年には水冷3気筒675ccの新型エンジンを搭載したデイトナ675が誕生し、
翌年の2007年にはデイトナ675とベースを同じとするネイキッドモデル、初代のストリートトリプルがデビューした。
軽量な車体にパワフルなエンジンを搭載したストリートトリプルはまたたく間にヒットモデルとなった。
このミドルクラスを代表する3気筒スポーツネイキッドの「ストリートトリプル」が2023年モデルでエンジンを刷新し、最強シリーズへと進化したのだ!!
新生ストリートトリプルは「公道走行可能なMOTO2マシン」
2019年よりロードレース世界選手権Moto2クラスに「ストリートトリプル」ベースの3気筒エンジンを供給しているトライアンフ。
2023年型Moto2エンジンは新型ストリートトリプル用がベース。レース専用チューニングが施され最高出力は141ps/14000rpmに達する。
Moto2で磨かれた新設計の3気筒エンジンを搭載する「ストリートトリプル765RS」「ストリートトリプルMoto2EDITION」はシリーズ史上最高の出力とトルク性能を実現している。
2023年に刷新したストリートトリプルは、
・ストリートトリプル765R
・ストリートトリプル765RS
・ストリートトリプルMoto2EDITION
の3種類がラインナップされる。
それでは新生スピードトリプルの詳細を紹介していこう。
ストリートファイターの新たな定義
ストリートトリプル765R
大幅な改良が施された新生スピードトリプルのエンジンの基本的な部分は共通。
扱いやすさ重視で最高出力は、従来モデルから2psアップの120psに設定されている。
サスペンションは前後ともにフルアジャスタブル(全調整式)のSHOWA製を採用している。
電子制御関連では新スロットルマップにより4段回のライディングモードを備え、最適化されたコーナリングABS&トラクションコントロールがライディングをサポートしてくれる。
USB電源が標準で付いているのもポイントだ。
オプションとして、クルーズコントロール、標準シートより28mm下がるローシートが用意され、より快適性と安心感をアップできる。
クラストップの130PS!
ストリートトリプル765RS
ロードレース世界選手権Moto2クラスに提供している3気筒エンジンをベースとし、最高出力はクラストップの130psを発揮する。
ギア比や減速比の見直しで加速性能も上がり、従来モデルよりもエキサイティングな走りを楽しめる。
車体側を見ていくと、12mmワイドハンドルを採用し、ジオメトリーを見直したことで扱いやすさと俊敏性を向上。
強力でコントローラブルなブレンボ製のハイグレードなキャリパーを装備。
フロントサスペンションにはSHOWA製ビッグピストン倒立フォーク、リアサスペンションにはオーリンズ製STX40リアサスペンションを採用し、ともにフルアジャスタブルとなっている。
新スロットルマップによる5段階のライディングモードと、最適化されたコーナリングABS&トラクションコントロール、トライアンフ・シフトアシスト・アップダウンクイックシフターにより、安全性を高めつつもスポーツライディングを享受できる。
究極のストリートトリプル
ストリートトリプルMoto2EDITION
究極のストリートトリプルで全世界 各色765台限定。日本国内では100台入荷予定だ。
スポーツライディングに適した前傾姿勢を取りやすいセパレートハンドル、よりサーキット走行に適したオーリンズ製NIX30倒立フォーク、オーリンズ製STX40リアサスペンションを採用。
その他の基本的な部分はRSと共通だが、Moto2由来のスタイルとカラーを用い、外装にはカーボンパーツが奢られている。